ff 診察室こぼれ話
生活習慣病の1 つである糖尿病は、万病のもとと言われ、様々 な合併症を引き起こす病気です。最近注目を集めていることがあ ります。高齢化社会を迎えて、高齢者糖尿病が増加していること です。糖尿病の7 割以上を65 歳以上の高齢患者が占めているの が現状です。
高齢者糖尿病の特徴ですが、症状の進行に気づきにくいという 傾向があります。高血糖による口喝、多尿なども自分では判断が つかないこともあり、また、手足のしびれや物覚えが悪くなって きたという症状も通常の加齢で起きますが、糖尿病の進行に伴う 合併症の可能性もあります。
また、高齢者糖尿病では若年者に比べて、症状が出にくいとい う特徴があります。特に懸念されるのが低血糖の症状がわかりに くいという点です。通常、低血糖になると、冷や汗や手足の震え などが出現しますが、高齢者ではこれらの症状がでにくく、対応 が遅れてしまうことがあります。そのため、2015 年に日本糖尿病 学会と日本老年学会が「高齢者糖尿病治療向上のための」合同委 員会を設置し、病状に応じた治療基準の目標を定めました。
糖尿病の指標のひとつにHbA1c というものがあり、これにより 測定前の約1~2ヶ月の平均血糖値がわかります。一般的に HbA1c が6.5%以上を糖尿病の基準とされており、若年者では 6.0%前後にコントロールするのが理想的ですが、高齢者糖尿病で は緩めのHbA1c7.0~8.0%未満を目標値としています。また、イ ンスリン製剤、スルホニル尿素剤など低血糖をおこしやすい薬を 服用している場合にはHbA1c7.5~8.5%未満と高めに設定してい ます。
糖尿病の三大合併症として、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、 糖尿病性神経障害があります。腎機能が悪化、網膜症で目が見に くくなる、神経障害で手足のしびれ、痛みあり、進行すると感じ にくくなったりします。悪化すると、腎不全、失明、足の切断と いうようなことになります。
特に高齢者糖尿病の場合、認知 症の発症リスクが増加するといわ れています。アルツハイマー型認 知症は、糖尿病を持っていない方 に比べて糖尿病の方は有意に発症 率増加することが調査の結果明ら かとなっています。高齢者糖尿病 の方にとっては、「血糖値のコントロールをする」ということは、 そのまま「認知症予防」にも効果的であるといえます。
また、糖尿病によって血糖値が高い状態が続いてしまうと、脳 の血管が詰まりやすくなったり、もろくなって十分な血液が行き 届かなくなってしまいます。そのため、糖尿病ではない方に比べ て脳血管性認知症の発症率も高くなっています。
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