ff 診察室こぼれ話

大切な人を支えるために知りたい緩和ケア

がんは、日本人の死因で最も多い病気です。現在、3 人に1 人ががんで亡くなっています。このように身近な病気になった、がん。あなたの大切な方も、がんで悩んでいるかもしれません。がん患者さんは、がん自体の症状のほかに、痛み、倦怠感などのさまざまな身体的な症状や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験します。

過去には、がんの治療による効果が望めなくなった患者が、がん治療から緩和ケア病棟へ移行すると考えられていました。そして、がん治療と緩和ケアにはっきりとした線引きが行われていました。

最近では「緩和ケア」は、がんと診断されたときから行う、身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケアと捉えられています(「がん対策推進基本計画(平成24 年6 月閣議決定)」)。がん患者とその家族が、可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われることが求められています。

緩和ケアの対象の患者さんは、がんだけではなく心不全に対しても2018 年4 月から公的保険の対象となりました。心不全は、心臓機能が衰え、息切れやむくみが起こる病気です。心不全は薬などで症状が抑えられている患者さんもいますが、一般的には、症状が再発しやすく、入退院を繰り返しながら悪化していくことが多い疾病です。そのため、緩和ケアを導入されてきています。日本では、「ホスピス」は"がん"の末期医療を行う施設のことを指します。「緩和ケア」はもっと広い概念で、治癒が難しい進行性の疾患で病期によらず苦痛の緩和を目指す医療やケアのことを指します。具体的な緩和ケアの特徴は以下の通りです。

①痛みやその他の苦痛な症状から解放する
②生命を尊重し、死を自然なことと認める
③死を早めたり、引き延ばしたりしない
④患者のためにケアの心理的、霊的側面を統合する
⑤死を迎える迄患者が人生を積極的に生きてゆけるように支える
⑥家族が患者の病気や死別後の生活に適応できるように支える
⑦患者と家族―死別後のカウンセリングを含む―のニーズを満たすためにチームアプローチを適用する
⑧QOL を高めて、病気の過程に良い影響を与える
⑨化学療法や放射線療法などの他の延命を意図する治療と併存しながら、疾病の初期から適応可能である。さらに、必要ならそれらの治療に伴う副作用の緩和を行う

このように緩和ケアを担当する医療者は医学的な技術だけではなく、患者さんや家族に寄り添うことのできるケアマインドや死生観、スピリチュアリティなども求められます。

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あれこれ情報版

暑さ寒さを数えるうちに、「ああ、今年も暮れていく・・」と焦りを感じる季節となりました。インフルエンザの予防接種はもうお済みでしょうか?すでに流行期にさしかかっているようです。早めの対策をしましょう。

当院の年末年始の休診は以下の通りです。年始は1 月6 日(月)より平常通り診療いたします。

75 歳以上の神戸市民の方へ、認知症検査のご案内が届いています。当院でも検査を受けていただくことができます。診察の前に問診票の記入が必要となりますが、記入項目が多いので、お家で書いていただけますよう、ご希望の方は事前に問診票を取りにいらしてください。詳しくはお気軽にお尋ねください。